「RTした人の小説を読みに行く」のは何のため?
Twitterのアカウント名に「@カクヨム」を付けて、最近気づいたことがあります。
それは「#RTした人の小説を読みに行く」というハッシュタグの活発さです。
このタグは読んで字の如く、「このツイートをリツイートしてくれたらあなたの作品を読みにお伺いします」という宣言です。
割と疑問なんだが、RTした人の〜ってタグで皆さんの作品で勉強させてください的なのをみるけど、面白いかもわからない不特定多数の作品を読んで勉強になるのだろうかと思ってしまう
— ひょろ@読み専 10/53 (@Pour_ma_chere0) 2018年3月8日
ちゃんと商業作品読んで勉強するか、なろうの書き方や流行を知りたいのであれば日間上位のを読んだ方が早いのでは
「#RTした人の小説を読みに行く」というタグには、以下のような意図が込められていると考えられます。
①とにかくいろんな小説が読みたい。
②レビューを書く練習がしたい。
③Twitter上のつながりを作りたい。(たくさんRTされたい、を含む)
④あわよくばお返しに読みに来てほしい。
このうち①と②は極めて健全な動機です。
投稿作品には無料で読めるという強みがあります。
とにかくさまざまな文章を読み漁りたいという人が#RTした人の小説を読みに行くのは、何らおかしなことではありません。
③も健全な動機と言えます。
SNSだけのつながりは批判の対象になりがちですが、リアルの人間関係のほうが常に高尚だとは思いません。
なまじ顔を合わせるせいで希薄になっている関係性もあるはずです。
そして④も実は健全です。
書いている人はみんな、読まれたいのです。
読まれたくて読まれたくて仕方ないのです。
「Facebookに子供の写真とかをアップしているリア充の皆さん」は、「結婚もせずに小説(笑)を書いている元クラスメイト」をバカにしてはいけません。
作品は、子供の写真と同じです。
自分の血肉を分けたものだから、見せたいし、評価されたいのです。
「子供の写真」と「小説」の最大の違いは、閲覧にかかる時間です。
子供の写真なら「いいね!」を押して、ちょちょっとコメントすれば終わりですが、小説は短編でもそれなりの時間を取られます。
まして、まともに読めるレベルか、自分の好みに合うかといったボーダーもクリアしているとは限りません。
子供なら「絶対にかわいい」ですが、作品は「クソ」かもしれないのです。
ですから、素人の作家が自分の作品を誰かに読んでもらうのは、ものすごく大変です。
発表すれば誰かが読んでくれる、そして良さに気づいてくれる――なんてことはなかなかありません。
10000人が読んでくれたらその中に「見る目と影響力を兼ね備えた人」がいるかもしれませんが、100人では絶望的です。
大変だといっても、やるしかありません。
そして、読みに来てもらうために最も手っ取り早いのがおそらく「読みに行くこと」なのです。
読んでもらったらお返しをしようというのは人として自然な感情です。
僕も誰かがコメントを書いてくれた時は、できるだけお返しに読みに行くようにしています。
今一番勢いのある投稿サイト「小説家になろう」では、規約で「評価の依頼」を禁止していますが、「#RTした人の小説を読みに行く」というタグはお返しをしてほしいなんて一言も言っていないので、この規約には抵触しないのでしょう。
一人又は複数のユーザが、本サイト内外を問わず、特定の作品に対する評価を依頼する文章を掲載する、又はメッセージで送信する行為。
ただし、本サイトの評価システムの信用を毀損する恐れがないと判断される行為は除く。
「評価を送り合いましょう」と明言したらアウトでも、「#RTした人の小説を読みに行く」と言うだけならば、言外に「相互」を期待していてもセーフというわけです。
演劇の世界では「相互」は当たり前、というか必須条件でした。
小劇場の演劇人はみんな、「演劇が好きだから」とか「演劇の勉強のため」ではなく、「観に来てもらうため」に他人の演劇を観に行っていました。
そして、SNSでは大絶賛みたいなことを書きながら(あるいは沈黙を守りながら)、リアルでは「マジ苦痛」「もう行きたくない」などと言いたい放題でした。
たまたま僕の近しい人々がそうだっただけかもしれませんが、極端な例だとは思いません。
何しろ演劇は、ネット小説よりはるかに「切羽詰まっている」のです。
ネット小説は誰にも読んでもらえなくても何の損失もありませんが、演劇は3000円とかそれ以上のチケット代を取っています。
売り切れなかったら、自分(あるいは自分たち)が自腹で買い取ることになります。
ですから、小劇場の世界で長生きするためには、興味があろうがなかろうが知人の舞台にせっせと足を運び、「お客さん」をキープする必要があるのです。
「#RTした人の小説を読みに行く」のハッシュタグがずらりと並んでいるのを見て、僕は「みんな気前がいいんだな……」と思いました。
「読むにたえないかもしれない素人の投稿作品を読むのに貴重な時間を割くぞ」ということだからです。
僕自身「読むにたえないかもしれない作品を投稿している素人」であり、「読むにたえないかもしれないけど一読してみてほしい」と思いながら投稿しているくせに――こんなことを言うとまた敵を作るのでしょうが――読者としては「どうせ読書するならハイレベルな作品だけを読みたい」というのが本音です。
そのため、自分から他の人の投稿作品を読みに行くことはほとんどありません。
基本、書籍ばかり読んでいます。
これは「今どんな作品が人気なのかという研究」と「ネットワークづくり」を同時に怠るものであり、決して褒められた態度ではありませんが、僕にとって「ハイレベルと思えない作品を読むこと」は耐えがたい苦痛なのでどうしようもありません。
ここまでお読みいただいた上で、それでも作品を読んでほしいという人が万が一いらっしゃいましたら、2018年3月末までに下記のツイートをRTの上、
投稿しました。
— 森山智仁@カクヨム (@bacoyama) 2018年1月14日
「RTした人の小説を読みに行く」のは何のため? - それにしても語彙が欲しい。https://t.co/Zd99zstW6J
演劇の世界では「相互」は当たり前でした。
メールフォームかこの記事へのコメントでご連絡ください。
ツイートへのリプライでは反応しません。
- 最低8000文字ぐらいは必ず読み、面白かったら続きも読みます。
- 感想は「このブログの記事」として書きます。
- 一応、念の為、先着10名様まで。
以下、1月10日(水)から現在までに頂戴した質問へのご回答です。
ジェシーさん(@Jecy_Losika)のイラストを見て毎日ほっこりしています。 #こむぎこをこねたもの #peing #質問箱 https://t.co/DAaHxBy7RK pic.twitter.com/xXMQH6S2UE
— 森山智仁@カクヨム (@bacoyama) 2018年1月11日
禁則事項です☆ #peing #質問箱 https://t.co/r7HfdukVOL pic.twitter.com/WUmBMLuPFV
— 森山智仁@カクヨム (@bacoyama) 2018年1月11日
味噌田楽とか食べたいですね。 #peing #質問箱 https://t.co/r94OmeOaeM pic.twitter.com/yyxAlCGUaO
— 森山智仁@カクヨム (@bacoyama) 2018年1月12日
仕事部屋は欲しいです。あとはなるようになるでしょう。 #peing #質問箱 https://t.co/UYyYaPadRf pic.twitter.com/fpsZsDDLE1
— 森山智仁@カクヨム (@bacoyama) 2018年1月12日
ご質問ありがとうございました。
他にもありましたらお気軽にどうぞ。