それにしても語彙が欲しい

脚本家/フリーライター・森山智仁のブログです。ほぼ登山ブログになってしまいました。

第1回DramaJam全6作品の個人的感想

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第1回(すでに第2回をやるつもりで第1回と書いています)DramaJamへのご参加・ご来場、誠にありがとうございました!

 

この記事では各作品への個人的な感想を書いていきます。

また、ご本人の終演直後のツイートを添えておきます。

 

維嶋津さん『五反田・五人組・爆発まであと五分』

ミッションの解決の仕方が一番スマートでした。森田さんが5・7・5・7・7をフル活用してきたのでそちらの影に隠れ気味ですが、3つのミッションを障害ではなく踏み台として活用したのは維嶋さんだけです。状況を読む力が高いのだと思います。

ミッションを上手く使った一方で、音響効果は活用できていませんでした。音響への指示が一切なく、不要と判断されたようですが、結果的には必要だったと思います。たとえば、爆弾を投げ合うシーンにSEがあれば観客はもっと反応しやすかったはずです。

 

一之瀬楓さん『オルタナティヴ』

「映像」のイメージで作品を作ったのは一之瀬さんだけだったと思います。よくある「本当は映像でやりたいけど専門知識がないからお手軽な演劇で代用してるだけ」の演劇作品に対しては「映像行け」としか思えないのですが、「朗読」は観客の脳内に映像が立ち上がれば成功です。朗読公演の料金設定は大いに議論すべきですが、朗読という表現方法の可能性を感じさせてくれました。

弱点はキャラにオリジナリティーが無いことです。他の5作品のキャラがみんなものすごく個性的かというとそんなことはないのですが、この作品のキャラは率直に言ってフリー素材のように印象が薄いです。その最たる原因はキャラの性格とか設定ではなく、言葉、語彙だろうと推測します。

 

西河理貴さん『ビーンボールをもう一球』

劇団はるさめの旗揚げ公演と本作を続けて拝見し、安定して「掛け合いをしたくなる会話」が書ける作家さんだという印象が僕の中で定着しました。前半の軽い言葉と後半の重い言葉のバランスも良く、優等生的な作品です。

気になるのは「どうしても音楽でなければならなかったのか」という点です。確かに音楽の話をしているのですが、若者のチームプレイなら、演劇・スポーツ等、他の何かでも代替可能だと感じました。即興イベントで要求し過ぎかもしれませんが、専門性が濃くなればより良くなっていたと思います。

 

森田玲花さん『短歌病』

発想は天才のそれ。タイトルも秀逸。途中経過報告として最初に上がってきたアイディア集も全部面白そうで、どんどん閃いている今のうちに作品を書いてほしい人です。

観客からの評価も高かったのであえて冷たい言い方をしますと、中盤の5・7・5・7・7が雑です。反復しているだけで工夫がありません。全部「いと速報」級の精度があれば完璧でした。

 

オノデラヒカリさん『あたらしいおんな』

個人的に色々あって、本件は絶対に忘れられてはいけない事件だと思っているので、ストレートに取り上げてくれて嬉しかったです。ぼかしすらしない勇気には驚かされました。

最初が衝撃的で終わり方は巧みですが、中盤は見応えに欠けます。ストレートなだけに、ただ流しているだけではノンフィクションやドキュメンタリーに勝てる要素がありません。演技をもっと詰めて緩急をつければ――特に「急」にこだわれば――ヒリつく作品になったと思います。

 

馬原颯貴さん『タイムライン』

エンタメとしての完成度は随一でした。役者とのディスカッションを活用しながら、ただ拾った素材を並べるのではなく一つの筋に束ね、音響・照明の効果も使いこなしていました。

序盤のつぶやきについて「本当に聞き取れなくていいの?」と、また、時間遡行あたりについて「これみんな聞き取れてる?」と感じました。わりと有名な劇団でも「もはや聞き取れなくていいから捲し立てろ」とか「セリフ潰していいから爆音鳴らせ」とパッション全振りの演出をしているところは珍しくありませんが、作家・役者は観客と違って言葉をすでに知っているので、自己満足に陥っていないかと危惧します。

 

ちなみに昨日は、 

と言ったのですが、とても書き切れなかったので、企画としての成果・反省は改めて土曜日に投稿しますm(_ _)m

 

観客の皆様のご感想ツイートはこちらにまとめさせていただきました。