二大「小説漫画」に見る、インプットの必要性
欅坂46の平手友梨奈さん主演で映画化された『響〜小説家になる方法〜』と、Noveljam*1同期の山田しいたさんによる『乙女文藝ハッカソン』はどちらも「小説」がテーマの漫画です。
『響』は天才が無双する話、『乙女』はチームライティングの話で、枠組みやノリはまったく違うのですが、明確に共通している点が一つあります。
それは「執筆という行為について、豊富な読書経験を前提としていること」です。
響は初登場時、歩きながら本を読んでいて(良い子は真似しない)、その後も事あるごとに本を読んでいます。
編集のふみに「小説はどれくらい読むの?」と訊かれた時は「たぶん、月に20〜30冊くらい」と答えていました。(3巻)
新人賞授賞式の控え室のシーンにも、「田中くんは小説どれくらい読むの?」「月に6、7冊くらい……」「ちょっと少ないかな、もう少し色々読んだほうがいい」というやりとりがあり(4巻)、小説を書くにはまず小説を読めという思想が現れています。
『乙女』の主人公・麻紀ちゃんも響に負けず劣らず、相当な本の虫です。
入寮初日の「どの本が好きかで大体判別できるわ」の9択に「全部大好きです」と答えていますし(1巻)、プロデビュー済みの野原さんと「最近読んだ本は?」で始まるトークを夜が更けるまで続けています。(2巻)
野原さんは「読書量が多いと良い小説を書ける確率が上がる」と、たくさん読めば書けるようになるわけではないという点を慎重に抑えつつ、やはり執筆は読書量がモノを言うという観点で描かれています。
「当たり前ではないか」と思われる方もいるかもしれません。
ところが、読みたいより書きたいが先行している人というのは一定数存在します。
さらに言うと、小説を読むのは苦痛だけど小説を書きたいという人が意外に少なくないのです。
そういう人たちは『響』や『乙女』を読んだ時、遠回しに圧をかけられているように感じるかもしれません。
僕自身、「お前どんだけ読んでんの?」と言われている気がして冷や汗が出ました。
『乙女』の1巻で提示される9択、麻紀ちゃんがどれか1つでも読んだことがなかったら、物語はそこで止まっていました。
「小説書きたいなら当然このぐらいは全部抑えて来てるよね?」という感覚で出された9択なのです。
ちなみにあの中で僕が読んだことあるのは2冊、映像化したものを見て内容を知っていたのは4冊でした。
あの世界では僕はスタートラインにすら立てていないわけです。
読まないのに書きたいという不思議な行動は、「本当は漫画やアニメを作りたいんだけど絵は描けないから字を書いている」ということなのだろうと解釈しています。
その根拠は、畑は違いますが、小劇場の世界にも「本当は漫画や映画を作りたいんだけど(比較的)ローコストで作れるから演劇をやっている」(としか思えない)作品がたくさんあるからです。
初めて舞台用脚本を書く人へ
— 森山智仁 (@bacoyama) 2019年3月9日
・映画でイメージすんな
・アニメでイメージすんな
・漫画でイメージすんな
・ゲームでイメージすんな
・本当は他の媒体でやりたいことを舞台に持ち込むな
舞台でしかやれんことやろうや
今年はインプットの年にするぞと宣言して早半年、ありがたいことにお仕事の依頼が多くて、まったく「インプットの年」になっていません。
長編小説を書くコンディションからは程遠い状態にあります。
専業の作家さん方は忙しいスケジュールの中、時間をやりくりしてインプットに充てているのでしょうか。
それとも、完全に習慣づいて、もうインプットをインプットとも思わないのでしょうか。
どちらかと言えば後者という気がします。
生活スタイルを見直さなあかんな……と思う今日この頃です。