それにしても語彙が欲しい

脚本家/フリーライター・森山智仁のブログです。ほぼ登山ブログになってしまいました。

美貴ヲの劇『アベサダ:リローデッド』の感想

美貴ヲの劇は先日の記事でも取り上げさせていただいた劇団です。

moriyamatomohito.hatenablog.com

『月経ファンタスティック』は大変面白かったのですが、率直に言って今回の『アベサダ:リローデッド』はあまり楽しめませんでした。

  • 冒頭のピュアな告白から既婚者三股男になった経緯が不明すぎる。作者の都合で豹変させられたのでは。
  • 阿部定の解読に独創性が感じられない。単に独占欲が高じただけとしか。
  • ラブホでお通夜という設定は面白いけれど、その設定への自己言及が多すぎる。

 

 

 

『月経ファンタスティック』が非常に良かったので、どうしてもそれと比べてしまった部分はあります。

というか、『月経ファンタスティック』とほとんど話を聞かされているように感じてしまったのです。

 

これは、かつて集団as if~でも感じたことです。

2012年の『一握の紲』は強烈に面白かったのに、翌年『迷中の学舎』を観た時にはもう飽きていました。

 

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劇団というのは大抵、毎公演同じ人が作・演出をします。

これを交替制にすべきだとは思いません。

作・演出が同じ人だからファンは安心してその劇団の公演に通えるのです。

 

けれども、作品がしばしば似通ってしまうという弊害はあります。

『月経ファンタスティック』と『アベサダ:リローデッド』、それに『一握の紲』と『迷中の学舎』も、設定や人物はまったくの別物です。

しかし僕は「突き詰めれば作家が発信しているメッセージは同じだ」と感じました。

 

とは言え、「突き詰めれば」レベルのことなら、毎回同じで構わないのかもしれません。

僕も自分が作・演出をしていた頃は毎回「物事は自分の頭で考えたほうがいい」というメッセージを発信していました。

なので「あいつの書く話って毎回同じだな」と思っている人も余裕でいたと思います。

 

一度見て「好きじゃない」と思って二度と行かないのは簡単ですが、一度見て好きだったのに次見たら面白くなかったというのは悲しいものです。

飽きる場合と飽きない場合の違いはどこにあるのか、僕の中でもまだ答えは出ていません。

作家と観客の相性の問題――だけではない気がします。