チラシを見て思い描いていた通りの雰囲気でした。
デザインに一貫性があります。
ボリュームのあるセリフを高速でやりとりするのが心地よいです。
子役のお二人も大人たちのテンポに余裕でついてきていたので驚きました。
「人間界への扉を開くところ」までは、非の打ち所のない出来栄えでした。
知人が東村アキコさんの漫画を「思ってから0秒で描いている」と評していて、言い得て妙だと思ったのですが、!ll nut up famの朱木雀空さんも「思ってから0秒で書いている」感じがします。
「人間界への扉を開いたあと」がよくないです。
難点は二つあります。
①大人たちがさほど童心を失っているように見えない
小学校からの腐れ縁が社会人になっても続いている時点で、世間一般から見ればだいぶ「童心」が残されているほうだと思います。
また、ナップたちが現れる以前の様子もさほど「失われている」感じがしません。
サンタさんが言っていた課題が実際に行ってみたら不明瞭で、何をどう解決すべきなのかが見えてこないのです。
もっとごっそり童心を失っている大人はいくらでもいるはずです。
②ラストがただのお説教になっている
芝居のテーマが「童心を思い出してほしい」だとしても、それを直接セリフで言われると興覚めです。
これは僕の好みの問題とかではなく、今後物語を書く上でぜひ覚えておいてほしいことです。
「童心を失う虚しさ」や「童心を思い出す素晴らしさ」をエピソードとして見せてくれれば、セリフで直接言われるよりはるかに強く、観客は「童心を持ち続けるって素晴らしいな」と思うことができます。
花は美しいと書いてあるプレートより美しい花の絵一枚のほうがずっと説得力があるでしょう。
冒頭のダンスのクオリティが高く、いきいきとした役者さんたちの姿を通じて僕はもう「童心を持ち続けるって素晴らしいな」と十分に感じていました。
よって、終盤のお説教の連続は、技法もよくないですし、蛇足でしかなかったのです。