ちょっと思うところがあって、今日は劇団の主宰者と役者の関係性について述べます。
主宰と劇団員と客演
まず整理しておきたいのが、
- 主宰
- 劇団員
- 客演
それぞれの立場です。
主宰は座長とか代表であり、多くの場合、脚本・演出を兼ねています。
劇団員はその団体に所属している人です。
劇団によってルールが異なると思いますが、基本的には劇団のスケジュールを優先して活動します。
客演はその団体に所属していない出演者です。
- よその劇団の劇団員
- 芸能事務所の所属
- どこにも所属していないフリーの役者
という3パターンがあり、1と2の場合はクレジットに括弧で所属が記載されます。
客演について
客演は所属状態の他に、その劇団への客演歴で分類できます。
- その団体には今回初めて出演する
- 2〜3回目の出演
- 常連
所属なしで常連ならもう劇団員になっちゃいなよと傍目には思うでしょう。
実際、その流れで劇団員になることはわりと多いです。
しかし、あくまでも立場はフリーのままでいたいと考える人も少なくありません。
初めてか2回目かというのは結構大きな違いです。
右も左もわからない手探り状態と、ある程度カラーがわかっている状態とではやれることがずいぶん変わってきます。
また、外野から見ると、初めての時にもう二度とごめんだとは思わなかったのだと解釈できます。
役者と主宰の関係性
さて、やっと本題です。
「主宰」は脚本・演出と同一人物とします。
今ここに何らかの、主宰への反対意見があると仮定します。
「脚本が遅くて困る」というのは僕としては論外であり、考える価値もないので、「Aという演出をBに変えたほうがいいのでは?」という類の提案とします。
劇団員も客演も、本来は主宰の前に平等なはずですが、実際は立場によって異なります。
劇団員のほうが言い易く、客演では言いにくいはずです。
客演でも常連になれば言いやすくなるはずですが、初めてとか2回目は遠慮がちになるものです。
ところが、初めての客演でも言えてしまう人がいます。
- 単に気が強い人
- 作品づくりに真摯な人
- 強い事務所に入っていたり年嵩だったりして立場的に強い人
です。
1と2は一緒にすべきではないと考えています。
自分の意見が通らなかった時、2の人はすぐに切り替えられますが、1の人は不満げな顔色を隠すことができません。
作品を良くするために言いたいことがあるなら、劇団員であろうと客演であろうと、その意見は言ってみるべきです。
しかし初めての客演では、上に挙げた例外を除いて、遠慮する気持ちのほうが勝ってしまうものです。
客演が主宰に何か言いたい時はどうすべきか
普段から協力的になっておくと格段に言いやすくやります。
遅刻をしない、メールやLINEをすぐ返す、稽古場で返事をするといった当たり前のことから、何か手伝えそうなことはどんどん手伝うのです。
何をしたらいいかわからない人は、主宰と物理的に距離の近い人がどういう動きをしているか観察するといいでしょう。
例えば、「欠席の役者がいて、代役を決め忘れて稽古を始めてしまった際、素早くその代役に入る」みたいなことです。
少なくとも僕は「初めてのくせに出しゃばりが」などとは微塵も思わず、「ありがとう」と思います。
良い関係性が築かれていれば、相反する意見があった時も円滑な話し合いが可能です。
「普段何も貢献していないどころか場を盛り下げていて、さらに反対意見を言う」
これだと、どんなにその意見が正しくても、空気がヒエヒエになることは想像に難くありません。
また、お客さんをたくさん呼ぶと、自然と立場が強くなります。
同じ意見でも、予約が5人しか入っていない役者が言うのと、50人入っている役者が言うのとでは重みが違います。
本来、同じ意見なら等しく扱われるべきだと思いますが、「色々言ってるけど君5人しか呼んでないやんけ」となってしまうのも自然な感情です。
なお、上でも触れましたが、却下された時にすぐ切り替えることも大切です。
意見を却下された時に切り替えられない人からの意見など、誰だって耳を貸したくないでしょう。
ちなみに
僕は劇団時代、自分がいない飲み会で出た僕への悪口(劇団員が報告してきたもの)はガン無視していました。
本当に改善してほしいと思っているなら活動時間内に直接言うべきだからです。
陰口でしか言わないのは、さほど重要ではない or 修正は無理だと思っているということです。
制作面の問題の場合
制作・運営関連の問題は演出関連より重要度が上です。
役者はどんなに言いにくくても言わないといけません。
というより、主宰・団体側が役者に対して制作・運営面の不安を与えてはいけないのです。
制作面の問題は、主宰が脚本・演出に加えて制作まで兼任している場合に起こりがちです。
今の僕は完全に自分のペースで仕事を入れたりプロデュース公演を打ったりしているので、わらじを数枚重ね履きしても落ち着いて考えられますが、劇団時代は劇場・スタッフを確保するためにも次々と公演を決めていたので、制作面が手薄になることもしばしばでした。
制作は脚本・演出から切り離したほうがいいです。
とは言え、とにかく誰かいればOKというようなものではなく、意欲も知識もない人に雑に丸投げした結果、状況が悪化することもあり得ます。
面白いものをやりたいという気持ちだけではどうにもならないことが多々あるのです。
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