演劇の公演を中止することについて
演劇に限らず、今日はほとんどの「公演」が中止になったはずです。
公演中止を決めた各主催者は本当に偉い。途轍もない赤字を背負うだろう。計算は簡単で、入場料✕座席数分の売上がまるごと入って来ない、ざっくり言ってその分まるっと赤字になる。ファンの人はグッズを買うとか次回公演を予約するとかして、是非応援してあげて欲しい。
— 谷賢一 (@playnote) 2019年10月11日
中には強行しようとした団体もあったようですが、
ざっと調べた限り都内小劇場4つほど公演を行うつもりとのことがわかりました……
— 中佐 真梨香(空間企画) (@4no5noiuna) 2019年10月11日
抗議の電話してやめさせるくらいのことしたほうがいいのか…出すぎた真似なんじゃないか、とても迷ってます、、
こんなのは例外中の例外だと思いたいです。
中止したくない理由
外野からすれば「何を悩むことがあるか」と思うかもしれませんが、主催者の立場で中止を決定するのは結構勇気の要ることです。
一つは、谷賢一さんのおっしゃる通り、思い切り赤字になるからです。
僕の知る限り、劇場には災害時の補償がありません。
公演を中止しても劇場使用料はきっちり取られます。
契約書にそのように書いてあります。
もう一つ、「次の機会がないから」というのもあります。
一部のお客様は振り替えで後日の公演をご覧いただけるかもしれませんが、満席だったり他の用事があったりすればもう詰みです。
演劇は気軽に再生できません。
「中止になったのは1日だけだから1日だけキャストが再集合してどこか劇場を取って上演すればいい」なんていう話にはならないのです。
スタッフのスケジュールは大抵ガッツリ埋まっていて、仕込みには2日程度かかります。
あらゆる仕込みを諦めて役者の身体だけでやろうとしても、劇場が取れません。
基本は数日間まとめて借りる団体が優先であり、1日だけ貸してくれることは稀です。
演劇は舞台でしかできない
当たり前の話ですが、こういう時にはかなり重い事実としてのしかかってきます。
映像は映画館でも家でも観られます。
漫画や小説はカフェでも風呂でも読めます。
演劇はどうしようもありません。
これは、脚本家よりも役者にとって深刻な問題です。
脚本はまたどこかの機会で使えるかもしれませんが、演技は違います。
YouTuberが年に365回かそれ以上、いくらでも発表の場があるのに対して、舞台役者は年間6公演でも活発なほうです。
1公演4日間として、役者として自分を発表できる日は年に24日間しかないわけです。
365が364になるのと、24が23になるのとではレベルが違います。
「命を守る行動を」と言われている中、それどころではないかもしれませんが、役者の皆さんはさぞ悔しいだろうと思って書きました。
物理的要因でない場合
交通機関が止まっていて停電の恐れもある場合、どんなに強気な主催者でも最終的には中止を決断するはずですが、
- 世の中に自粛ムードが蔓延している場合
- キャストの中に犯罪者がいたことが判明した場合
どうすべきでしょうか。
悩ましいところです。
僕らは東日本大震災の年の5月、今思えば何だかよくわからない気遣いをしながら、予定通り公演をやりました。
平成→令和の改元はお祭りムードでしたが、昭和→平成の自粛ムードは相当なものだったそうです。
当時僕はまだ5歳で、記憶はないのですが、あたかも覚えているかのように書いた小説がこちらです。
moriyamatomohito.hatenablog.com
こんな時に宣伝なんて不謹慎では……?
と、日和ってしまうあたり、僕の根っこは8年前からあまり変わっていないのかもしれません。