それにしても語彙が欲しい

脚本家/フリーライター・森山智仁のブログです。ほぼ登山ブログになってしまいました。

『君たちはどう生きるか』(漫画版)の感想

こんな「お説教するぞ感」丸出しの本が100万部突破だなんて、ぶっちゃけ異常事態ではないでしょうか。

 

僕は「生き方」が書かれた本を読むのは「無駄な会議」と同じぐらい無駄なことだと思っています。

人生を変えるために必要なのは精神論ではなく「時間配分の変更」だからです。

(ソシャゲに費やしている時間を資格試験の勉強に回す、等)

自己啓発書を読むヒマがあったら部屋の掃除でもしたほうがはるかに有意義です。

 

 

書店で『君たちはどう生きるか』がヒットしているのは、宮崎駿監督が次回作のタイトルとして発表したからでしょう。

アニメーション監督の宮崎駿さん(76)は28日、制作中の新作の題名が「君たちはどう生きるか」になると明かした。1937年に吉野源三郎が発表した名著から取った。「その本が主人公にとって大きな意味を持つという話です」と内容にも触れた。「完成には3年か4年かかる」と言う。

 

宮崎監督は「その本が主人公にとって大きな意味を持つという話です」という言い方しかしていないのですが、「次のジブリの原作」だと勘違いして買っている人も相当数いると思われます。

情報の伝わり方なんてそんなもんです。

 

ちなみに僕が買ったのは「池上彰さん愛読」というPOPが付いていたからでした。

僕は池上さんを盲信しているフシがあり、池上さんに言わせればこれは良くないことのはずです(・∀・)

 

 

 

さて、『君たちはどう生きるか』は、タイトルの通り、人間はどう生きるべきかを考えさせる内容です。

一応「コペル君とおじさんの対話」という形を取っていますが、別にオブラートに包まれてはいません。

モロに人生訓です。

 

ところがどっこい。

これは良書でした。

 

これは良書だ――と僕が感じたのは、ここに書かれていることに最初から賛成しているからです。

この本によって何か新しい発見があったり目からウロコが落ちたりしたわけではないです。

(※ディスっているわけではないです)

 

少年時代に親や教師から「人生の教科書」として読まされたら、むしろ反発したかもしれません。

タイトルだけを見て「そんなもん自分で決めるわ」っつって捨てる可能性があります。

だから「この本を日本中の子供たちに読ませたい」とは、僕は思いません。

大学生あたりの時期に読むのが一番いいような気がします。

 

人間にとってとても大切なことが書かれているのは確かです。

けれど、僕はこの本の内容が一人でも多くの人に広まってほしいというよりは、この世に一人でも多くの「おじさん」がいてほしいと思いました。

 

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漫画なのに文字ばっかりの「おじさんのノート」(しかも見開き)が何ページもあり、本全体の中でおじさんの言葉が占める割り合いは多いのですが、おじさんは何事も絶対に自分からは語ろうとせず、「コペル君の発見」をとっかかりにしています。

おじさんは、子供の話を聞き、そこに「大切な何か」が秘められていることに気づき、真面目な話をすることができる大人なのです。

こんな大人が身近にいることは子供にとって大変な幸福です。

 

ふつうの大人なら、子供が「人間って分子なのかも……」とか言い出したら、「人間も分子の集まりなんだよ」というクソリプか、「いいからさっさと宿題やんなさい」みたいな完全スルーの反応になるはずです。

せいぜい「頭いいんだね偉い偉い」が関の山でしょう。

しかしおじさんは「君の発見は大発見かもしれない」と言って話を広げてくれるのです。

もし僕が将来、長期にわたって子供と接することがあったら、おじさんのようにありたいものだと切に思います。

 

 

以下、先日の「Peingの質問箱で自作自演してみた」から最近までに頂戴したご質問への回答です。

 

ご質問ありがとうございました。

他にもありましたらお気軽にどうぞ。

peing.net