それにしても語彙が欲しい

脚本家/フリーライター・森山智仁のブログです。ほぼ登山ブログになってしまいました。

何でも自分でやっちゃうのは本当に駄目なのか

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舞台「このへら」では、脚本・演出・制作・広報・撮影・編集を全部一人でやりました。

以前著書でも書いた通り基本は分担であり、全部自分でやっていることそのものは別に褒められたことではありません。

けれども、今回は「とにかく人を使えばいいというものでもない」という話です。

 

脚本・演出・制作について

脚本は以前「木星劇場プロデュース公演」にて書かせていただいたものなので、執筆の作業負担はありませんでした。

そうでなくても必ず稽古初日には脱稿するようにしているので、脚本と他の兼任は「大したことではない」と言えます。

 

受付は自分でやり、クロークと留守番に信頼できる人物を呼び、あと場内に一人お手伝いさんを呼びました。

演出家が劇場で制作業務にかかりきりで、役者に付きっきりでなくなる件について、劇団時代は文句を言う人もいましたが、初日以降に作品を良くしていこうという考え方がそもそも間違いです。

moriyamatomohito.hatenablog.com

 

広報について

本番が近づいて、広報のことを考える余裕がなくなってきた時に「誰かいれば助かるかも」とは少し思いました。

ただし、注目すべきは「何ができるか」です。

 

(出演者が頑張ってくれるのはもちろんありがたいのですが)Twitterでいっぱいツイートすることは広報活動と呼べるか怪しいレベルです。

基本的に自分のフォロワーしか見ておらず自分のフォロワーさえ見ている確率は低いということを片時も忘れてはいけません。

仮に、雑多垢・フォロワー数百程度の人を「広報担当」に任命したり、この規模で専用垢を作ったりしても、何か動いてる風になるだけで、何の成果も上がらなかったでしょう。

 

他の広報手段についても考えてみます。

折り込みは今は受け付けている公演が少なく、莫大なコストがかかる割に効果が不透明です。

それでも観劇習慣のある人へのアプローチはおそらく折り込みが最大の手段ですが、スケジュール的には初日一ヶ月前を切って入稿や折り込みでバタバタしているようでは完全に手遅れであり、本番間際に折り込みのことを考えてくれる人がいたところで無意味と言えます。

昔、居酒屋等への掲示を頑張ったこともありましたが、特に意味のない、昭和の根性論の世界と言っていいでしょう。

YouTube広告もコストの割に効果が不透明であり、YouTubeの客層が舞台芸術に対して(行き帰りを含めると)2時間以上の時間と4000円を支払ってくれるとはあまり思えません。

 

今ある予算と残り時間で何ができるか考えることができるのが分業の強みではあります。

が、Twitterの垢を育てたり、強い宣材を作ったりするには、長い時間がかかります。

プロモーション漫画は稽古開始のだいぶ前に立案・発注しました。

要は、企画の初っ端かそれより前から関わってくれる「広報担当」でないと意味がないということです。

山で迷ってから地図開いても手遅れなのと同じです。

 

撮影・編集について

撮影・編集にスタッフを呼んでいないことを劇場でちょっと驚かれました。

全部僕がiPhoneで撮っています。

映像のプロからしたら「舐めんな」と思う案件かもしれません。

 

確かにプロに頼めばより良いものができるかもしれません。

ただ、

  • 数万〜十数万円の追加予算
  • 撮影や編集の方針の打ち合わせや修正等にかかる時間

というコストと、

  • Adobe Premiere Pro(編集ソフト)を所有していること
  • 撮影から1週間未満で編集完了という無茶なスケジュール

を考え合わせると、自分でやる一択となります。

 

セリフも人物の動きも全部頭に入っているので、どういう角度で見せるのが効果的なのかも自分が一番よくわかります。

 

その一方で

舞台監督・音響・照明は馴染みのプロを雇いました。

この3つは仮に僕にスキルがあったとしても絶対に兼任できないポジションです。

 

人に任せるべきなのは

  • 絶対に無理な案件
  • 費用対効果が釣り合う時
  • 長く続けていくパーティーでメンバーを育てたい時

です。

 

とにかく振りゃあいいというものではない、という話でした。