それにしても語彙が欲しい

脚本家/フリーライター・森山智仁のブログです。ほぼ登山ブログになってしまいました。

ライブ配信以外で動画をマネタイズする方法

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全国公立文化施設協会が提示した感染拡大予防ガイドラインの「表現上困難な場合を除き原則としてマスク着用を求める」という文言が波紋を呼んでいました。

 

問い合わせた方によると、「本番中はマスクを外していい」(本番中を「表現上困難な場合」と解釈していい)ようですが、

※ガイドラインを作る側としては「外しておk」とは口が裂けても言えないのでしょう。

 

マスクを外すことができても客席の間引きや演者間の間隔など問題は山積みであり、

2月以前のように演劇公演ができる状態は程遠いと言えます。

表現の場は動画・映像の世界を間借りするしかありません。

 

 

ほとんどの演劇は商業ではなく

チケット代は必要経費を賄っているだけです。

みんな生活費は別口で稼いでいます。

つまり、演劇人が制作する、経費が(ほぼ)かかっていない映像作品はマネタイズできなくても無問題です。

 

しかし、プロのアーティストや博物館・水族館が次々とコンテンツを無料公開している中、「これを当たり前と思ってはいけない」という声も上がっています。

 商業か非商業かを問わず、価値ある映像を作った人は相応の対価を受け取れるのが健全な状態です。

 

マネタイズの基本はライブ配信

コロナ環境下における有名どころの取り組みはこちらの記事に大変よくまとまっています。

news.yahoo.co.jp

 

マネタイズについても言及されています。

Zoom演劇で特に注目したい点は、Zoom演劇を模索する多くの劇団が、単純にオンライン上でバズる動画を模索するだけではなく、劇団員の方々の収益の確保を模索されている点です。

「オンラインノミ」は500円でチケットを販売していますし、「未開の議場」や劇団テレワークは、無料カンパや後払いチケット方式を採用。

劇団ノーミーツは、現在はツイッターに140秒のZoom演劇を無料であげる活動が中心なものの、YouTubeライブにもシフトし、将来の収益化を模索しているようです。

 

ライブ配信、すなわち「その時限り」というのはかなり演劇的であり、マネタイズとの相性も◎です。

しかし、個人的には映像という媒体の良さは「じっくり編集できる」という点にあると考えています。

そして、ライブ配信以外の映像をマネタイズするのは現状、非常に困難です。

 

ライブ配信ではない動画をマネタイズする方法

難易度が高い順に以下の通りです。

①YouTubeの収益化審査を通す

②有料の動画配信プラットフォームを使う

③無料の動画配信プラットフォーム(YouTube以外)を使う

④視聴者と直接取引する

 

①YouTubeの収益化審査を通す

非常にハードルが高く、また、審査に長い時間がかかります。

YouTube に動画をアップしてそれらを収益化したいという方は多いですよね。ただ YouTube で収益化するには「過去 12 か月間の総再生時間が 4,000 時間以上、チャンネル登録者数が 1,000 人以上」という基準をクリアしていなければなりません。また基準をクリアしてもチャンネルの審査が必要となり、その審査に合格しなければ動画に広告を表示させ収益を得ることができません。

申請して1週間程度で「まだ結果が来ないのか」と思われる方も多いのですが、現状で審査期間は平均で1ヶ月以上かかるようです。これは自動的に機械が審査を行っているだけでなく、人の目でもチェックしているためだと考えられます。

https://www.iscle.com/web-it/g-drive/youtube/ypp-shinsa.html

 一例として、Twitterフォロワー数が約14000弱の劇団「柿喰う客」のチャンネル登録者数が約5000です。

単純計算でフォロワー数3000程度の知名度がないと厳しいと言えます。

 

審査が通っても、現金化するにはもう一山越える必要があります。

名YouTuberのように収益を上げるのは簡単ではない。そもそもYouTubeで収益を得るためには、チャンネル登録者数1000人以上、年間再生数4000時間以上というのが最低条件。この条件をクリアしても、広告収入は1再生あたり0.05~0.1円程度だ。つまり再生数10万回でも5000円から1万円程度にしかならない。また、18歳以上でなければそもそも収益も受け取れない。

「収益化はできているけれどごくわずか。正直、お小遣い程度にもならない」。登録者1千人程度のYouTubeチャンネルを運営する40代の男性はそう言う。広告収入は数千円程度だという。「あくまで自分のメディアを持ち、発信できる場としてとらえている。そうでなければやっていられない」。広告収入月額8000円を超えないと振り込まれないため、毎月振り込まれるわけでもないという。

https://president.jp/articles/-/33328?page=3

 

②有料の動画配信プラットフォームを使う

YouTubeは世界一有名な無料の動画配信プラットフォームですが、有料の動画配信プラットフォームも多数存在します。

liskul.com

 

メリットは、セキュリティーが高いことと、YouTubeと違って「再生数に応じて広告報酬が支払われる」というシステムではなく「動画そのものを有料化できる」という点です。

デメリットはシステム利用料が高く、小規模の配信では採算が取れないことです。

比較サイトで評価の高い「Video Cloud」の利用料が年額2,200,000円、「millvi」は月額50,000円です。

boxil.jp

 

③無料の動画配信プラットフォームを使う

比較サイトでは「ひかりクラウド スマートビデオ」が紹介されていますが、こちらは昨年サービスを終了しています。

www.ntt-east.co.jp

 

固定費無料プランが存在するプラットフォームは「Filmuy」というのがあります。

動画が実際に販売された場合のみ、販売金額の20%を手数料として差し引かせていただきます。

動画の合計アップロード量が4Gを超える場合、月額の有料プランにお申込みいただく必要があるのですが、この場合を除いてFilmuyに対してお支払いをしていただくことはありません。

https://filmuy.com/

非常に簡単に動画を販売できます。

ただし、20%の手数料が差し引かれます。

 

④視聴者と直接取引する

  1. 自サイトでカタログと注文フォームを作る
  2. 注文が来たら口座をメールで送る
  3. 入金が来たらDVDなりYouTubeの限定公開URLなりをメールで送る

という、アナログな方法です。

 

振込手数料やDVDの原価はかかりますが、配信プラットフォームの利用料やライブ配信アプリのマージンに比べたら微々たるものです。

小規模・一過性の動画販売の場合、収益化の効率はこれが最大です。

 

限定公開URLを送るという方法は、DVD代も送料もかからないのが魅力ですが、勝手にURLをバラまかれてしまう恐れはあります。(DVDにもコピーされる恐れはあります)

視聴者の良心を信じるしかないわけですが、高価・有名でなければさほど警戒する必要はないと考えられます。

 

あとは、投げ銭に近い仕組みとして、「動画自体はYouTubeで無料公開し、良かったら寄付を募る」という形も考えられます。

現状、違反ではないようです。

support.google.com

 

結局のところ

アナログな直接取引がベストです。

プロのアーティストのパフォーマンスを無料で見られる状況が「異常」と考えるべきであるように、何らかのサービスを使うなら利用料を取られるのは当然です。

 

ただ、ライブ配信のマネタイズ方法はそこそこ充実しているわけですから、そろそろライブ以外の動画に手軽に投げ銭できるシステムが登場しても良いのでは……とも思っています。

 

 

関連記事:

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