それにしても語彙が欲しい

脚本家・フリーライター森山智仁のブログです。毎週土曜or日曜(&気まぐれ)更新。

鍋割山荘の未成年対応について

※1/4追記あり

 

神奈川県丹沢の鍋割山荘がこんなツイートをされていました。

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リプライも合わせると以下の通りです。

  • この冬の19時過ぎ(?)に2人の未成年が来た
  • ライトも地図もなく下りられないと泣きついてきた
  • ライトを売って下りさせた
  • 特別扱いはしない

 

鍋割山荘は去年、表尾根縦走の延長で通りかかったことがありました。

 

一人の山好きとして、本件について私見を述べます。

以下、不確かな部分もあります。

 

山小屋とは

山小屋には公営と私営があり、全国のほとんどの山小屋は私営、鍋割山荘も私営のはずです。

公営ではないということは、基本的には商売であって、登山者を助ける義務はないということです。

 

山小屋は本来、そこにないはずのものです。

「鎖」や「標識」と同じで、あると助かるけれど、なくても別に文句は言えません。

僕は以前、男体山の裏道の荒れ方に文句めいたことを言っていましたが、あれは間違いでした。

「登山道」もまた、本来存在しなかったものです。

二荒山神社や自治体に男体山の裏道を整備する義務はなく、通行者が少なければ荒れるのは当たり前と言えるでしょう。

 

今回の未成年二人は、

「ひどい小屋に追い返された」

のではなく、

「たまたまそこに小屋があってライトを売ってもらえた」

ということになります。

 

ザックには何が入っているのか

登山と言えば大きなザックですが、山をやらない人は、

「一体何が入ってるの?」

と不思議に思っている方も多いのではないでしょうか。

弁当と水筒だけであんなに膨れ上がるわけがありません。

 

実際行ってみると、最終的に使わなくていいものが結構入っています。

 

僕は、今回問題になったライト(ヘッドランプ)、それにファーストエイドキット、風邪薬・痛み止め・正露丸、ホイッスル、ツェルト(簡易テント)等をまとめて緊急用のスタッフサックに入れています。

全部、使わずに済むならそれに越したことないやつです。

 

クッカー(小鍋)・バーナー・ガスカートリッジの調理器具セットは、その場で沸かした火でコーヒー飲みたいのと、ビバークに備えて毎回携行していますが、なきゃないで別に構わないものです(夏は特に)。

食糧は火のいらないものを持っていけばいいし、魔法瓶でお湯を持ってきてカップ麺を食べている方もよく見かけます。

 

レインウェア上下はさすがに必須ですが、そんなにかさばるものじゃありません。

 

つまり、日帰り登山の場合、非常用の食糧・水を含めた「最終的に使わなくてもいいもの」がザック全体の半分ぐらいを占めているわけです。

※テント泊となると話は違ってきます。

 

これは逆に、「とりあえず死なないためにそれぐらいの物資が必要」ということです。

 

変な喩えですが、ATMが存在しないとして、推定支出10000円の旅行にきっかり10000円だけ持っていく人はほとんどいないでしょう。

何があるかわからないからとりあえず20000円ぐらいは持つはずです。

大きな荷物の半分はその10000円みたいなものです。

 

何事も(仕事もスポーツもゲームも)ノーミスで最後まで終えるのは難しいものです。

そして、山の場合、ワンミスが命に関わります。

たとえば、「現在地がわからなくなったわけではない」けれど「道を間違えて2時間ロス」して日が傾き、焦って捻挫――みたいなケースはありありと想像できます。

ミスはいつでもあり得るから、ワンミスが死に直結しないよう備えるわけです。

僕自身いつ遭難してもおかしくないと思っています。

 

今回のケースについて

鍋割山に入る上では、鍋割山荘が存在しなくても生きて帰れるように、計画・装備しないといけません。

夜の19:00に鍋割山荘ということは、元々かなり危険な計画だったと考えられます。

また、ヘッドランプを持っていなかったのは装備上の不備です。

めちゃくちゃ怒られるべき案件と言えます。

 

前述の通り、小屋は偶然そこにあったものでしかなく、鍋割山荘はもう大晦日以外宿泊営業をやっていないと公言していることもあって、泊めてあげる義理もありません。

 

その上で、未成年なら泊めてやるのが人間だろうと思うのですが、いかがでしょうか。

 

もしかしたら、仕事として山に携わる方々は、非常識な登山者が多過ぎてストレスが溜まっており、何かイレギュラーがあった時に苛烈に反応してしまうのかもしれません。

というのは想像に過ぎませんが、まぁあり得るような気もします。

 

1/4追記

部外者の僕がいつまでも言うことじゃないと思いますが、公式からの状況説明と、当時小屋にいたという方のツイートを見かけたので、追記します。

 

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  • 当時小屋にいたのは小屋主さんではなくボランティアの方。
  • 公式のツイートは19時過ぎだが事の起こりは17時頃で、ツイートしたのはボランティアさんではない。
  • ほんとにヤバかったらボランティアさんは怒られても泊める気だった。
  • 登ってきた二人は「iPhoneがあるから大丈夫信者」の「イキったヤンキー」で、うどんを食いに、iPhoneの地図とライトで登ってきた。
  • 二人は泊めてくれとは言っていない。iPhoneで下りると主張し、それは危険だからと小屋側がライトを買うよう促した。
  • 「僕たち アニマルだから 大丈夫です」などと言っていた。
  • ゴミを投げ捨てながら無事に帰った。

 

謎なのは、そんな遅い時間に来たことです。

iPhone信者なのに鍋割山荘の営業についてiPhoneで調べなかったのでしょうか。

nabewari.net

 

ともあれ、未成年たちについて「イキったヤンキー」というキャラクターが判明したことで、本件への印象が変わった人もいるのではないでしょうか。

発端の「泣きついてきた」という表現から「かわいそうな子たち」をイメージした人も少なくないと思います。

単純に非常識な輩だったようです。

 

そんな奴らなら痛い目に遭ってしまえ……と、何を隠そう、僕もちょっと思いました。

しかし、これは良くない感覚です。

好き嫌いで選ぶもんじゃありません。

 

今後、「いや、平気っしょw」みたいな態度の相手を僕が助けなければならない場面があるかもしれないということです。

この可能性に気づけたのは大きな学びでした。

 

僕が小屋にいたとして、帰りたがっているイキったヤンキー二人を無理やり保護できるかと言われれば、自信はありません。

それでも、万が一のことを考えると、「いいから泊まっていけ」「金は後日請求する」というのが最適な対応だったと僕は思います。