それにしても語彙が欲しい

脚本家/フリーライター・森山智仁のブログです。ほぼ登山ブログになってしまいました。

演劇の公演は上演時間を告知したほうがいい

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多くの演劇公演のチラシや告知文には尺(上演時間)が書かれていません。

理由は二つ考えられます。

 

①決まっていないから

演劇の上演時間は通し稽古をやってみないとわからず、通し後も演出の変更や台本の追加で変化(縮むことは滅多にない)します。

チラシを印刷所に出す段階で上演時間が決まっていることはほとんどありません。

 

しかし、上演時間は(おおよそでも)わかり次第、WEB等で告知すべきです。

なぜなら、観劇に行くかどうかの重要な材料だからです。

 

例えば、平日19:00開演の回があったとします。

「みんな仕事終わりに来て、観た後は酒飲んで帰って寝るだけなんだから、終演予定時刻なんてどうでもいいだろ」

という考え方は傲慢すぎると言わざるを得ません。

世の中には夜中に出勤する人がたくさんいますし、僕のようなフリーランスは一日中働いています。(ちょっと盛りました)

「上演時間2時間だと後の予定に間に合わないけど1時間45分以内なら行ける」

というケースがあり得るわけですが、わざわざ問い合わせる人は稀で、ふつうは「行かない」という結論になります。

つまり、上演時間を書かないと、その尺なら来てくれたかもしれない人を逃している可能性があるわけです。

 

休日14:00の回でも同じことです。

「みんな今日は休みなんだろ」

というのはひどく狭い考え方です。

 

②言いたくないから

上演時間が決まったにもかかわらず書かない劇団が多いのは、あまり尺が長いと敬遠されるということをよーくわかっているからだろうと考えられます。

 

「2時間もあんのかよ……」

的な声はしょっちゅう聞きますが、

「せっかく行くんだからたっぷり観たい!」

みたいな声はほとんど聞いたことがありません。(個人の体験です)

 

そもそも多くの小劇場の座席はふわふわではありません。

トイレが近かったり、怪我などで長時間座ることが苦痛だったりする人もいます。

「だらだら長いのは勘弁してほしい」

と思っている人はたくさんいるはずです。

 

ところが、演劇の公演というのは、観客の希望に反して長くなりがちです。

稽古をしているうちに脚本家・演出家の見せたいものが増えたり、役者の演技に「感情が入って」間が長くなったりするためです。

 

「長いとしんどいのは知ってるけど頑張って作ってるんだから観に来てほしい」

というのが、長い上演時間を書かない劇団のホンネだろうと推察されます。

 

それでも上演時間は書いたほうがいいです。

というか、「上演時間○○以内に収める」というミッションをプロデューサーがクリエイターに課すべきです。(たいてい分業できていませんが)

いくら伸びても構わないという環境では引き締める技術が身につかないからです。

 

なお、僕は2時間オーバーの作品を全否定しているわけではありません。

どうしてもその尺が必要ということは十分あり得ます。

ただ、上演時間を書いたほうがお客さんに親切であり、ひいては劇団のためにもなるということです。