それにしても語彙が欲しい

脚本家・フリーライター森山智仁のブログです。毎週土曜or日曜(&気まぐれ)更新。

生きるために必要な文化芸術は家でも楽しめるわけだが

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舞台の脚本家(もやっているフリーライター)です。

「#文化芸術は生きるために必要だ」 に関するこちらの記事とリプを見ていて考えたことを書きます。

*1

 

 

寄席は必要か

休業要請に対して、いくつかの演芸場が「社会生活に必要である」として一時期、営業を続けていました。

 

「寄席は生活に必要か?」というクエスチョンに対しては、身も蓋もありませんが「人による」がアンサーとなります。

  • 大ファン→超必要
  • 興行収入で生活している人→超必要
  • 裏方として生活している人→超必要
  • 中ファン→まぁ必要
  • たまに行く人→なくなったらさみしい
  • 理解がある人→必要と言える(感情は抜きで)
  • 興味も理解もない人→不必要

 

小劇場やライブハウスは必要か

についても同じことです。

人により過ぎるので、「必要か否か」を話し合っていても水掛け論です。

 

「文化芸術は不必要」

とは誰も言っていません。

 

「家で動画とか見れば良くない?」

というのは一見、寄席やライブハウスや小劇場の魅力に対する無理解から来る罵詈雑言のようにも見えますが、ライブの魅力を理解した上で、

「『今は』在宅で摂取できるもので妥協せよ」

という意味で言っているのであれば、至極真っ当な主張です。

 

さて、劇場や劇団が動画(等)に席を譲り、閉鎖・休眠すると、何が起こるでしょうか。

 

①ライブハウスや小劇場は

発表の場であると共に、成長の場でもあります。

もとい、一般的には成長の場、ステップアップの序盤に過ぎないと見る向きが強いかもしれません。

この世のほぼすべての劇団員が「もっと大きな舞台で見たいです!」と「応援」のメッセージをもらったことがあるはずです。

小さな空間でしかできない表現も多々あるのですが、事実として、資金や実績を持たない人が利用できるのは小さな空間に限られます。

 

②ブレイク前のクリエイター・エンターテイナーのファンの数は

スタート時がピークです。

そして、

  • 時間の経過と共に
  • 発表と発表の間が空くほどに

落ちていきます。

 

最近だとYouTubeがわかりやすいでしょう。

「チャンネル開設しました、よろしくお願いします!」という動画が一番再生数が多く、回を追うごとにだんだん下がっていくのが普通です。

これは、作品の質が落ちるせいではなく(マンネリ化することもあるでしょうが)、視聴者の関心が薄れていくためです。

 

劇団もそうです。

普通は旗揚げ公演が動員数のピークです。*2

反例はいくらでも出てくるでしょうが、それは単純に「出演者数を増やしているから」です。

固定メンバーなのにファンを右肩上がりに増やせているチームは相当有望です。

 

ただでさえ飽きられていくのに、発表と発表の間を空けたら、飽きられるどころか忘れられていきます。

「コロナ収束してから再開すればいいじゃん」というのは正論なのですが、コロナ前に旗揚げして活動していた劇団の動員数が400だとしたら、収束後には200どころか100を切るだろうと思います。

ファンがいなければ金銭的にもモチベーション的にも活動を継続できません。

モチベーションの面では一人黙々と続けられる人も中にはいますが、世に出てくる可能性は低いと言わざるを得ません。

数多の劇団・個人が音もなく解散・引退していくでしょう。

 

①+②=

①成長の場が減り、

②チャレンジする人も減ると、

全体のレベルが落ちていきます。

 

今から数年後、

「最近はろくな役者がいない」

「面白い劇団が減った」

と嘆かれることになるでしょう。

 

テレビに出ているような俳優も、舞台出身の人はよく「芝居が上手い」と評価されています。

長時間一つの役に集中して演じ続ける機会は舞台ぐらいしかありません。

舞台の現場や質が落ちれば、回り回って、テレビで見られる俳優の質も落ちることになるはずです。

 

個人的には

コツコツと発表は続けていくつもりですが、「文化芸術は生きるために必要だ」のタグで言われている論調には共鳴しません。

カルチャーの質が下がることについて、「医療や飲食業より優先すべきである」とは思わず、「そういう災厄である」と解釈しています。

 

関連記事:

moriyamatomohito.hatenablog.com

*1:あえて否定的なリプを引用しています。

*2:ゆえに、スタートダッシュ特典をフル奪取して次に繋げるのが理想なのですが、戦略的に旗揚げ公演をやれるところは稀です。
うちも「勢い」でした。