それにしても語彙が欲しい

生活の中で考えたことや、感銘を受けた作品のレビューなどを書いていきます。毎週土曜日(&気まぐれ)24:00頃更新。

今だから話せる、劇団の解散とNovelJamのこと

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劇団バッコスの祭が解散したのは2016年9月ですが、僕個人が解散を決意したのはそれより1年以上前のことでした。ボロ雑巾のようになってしまった頭で何日も考え続け、「ああ、これは解散だ」と感じたある朝のことを今でもはっきりと覚えています。

その時点で翌年9月の分まで劇場を予約していました。キリよく第30回ということもあり、「そこまでやって終わりにしよう」と決めました。ちなみに劇場は(時期や規約によりますが)キャンセルすれば数十万のキャンセル料がかかりますし、スケジュールを確保してもらっていた関係者にも迷惑がかかります。

まず、在籍の劇団員にだけ、来年の9月で解散することを伝えました。相談ではなく決定事項として伝えました。この事柄だけ見ると横暴に思われるかもしれませんが、議論の余地なしという判断です。フリーの役者さんやスタッフさんにはまだ言いませんでした。劇団員以外では、親にだけ言いました。

対外的な発表は「第29回公演のカーテンコール」(終演後の挨拶)と決めました。観劇後の余韻を吹き飛ばしてしまい、お客様には申し訳なかったです。今思えば「初日1週間前にネットで」とかにしたほうが、第29回公演の動員も後押しできてよかったのかもしれません。

最終公演は、些細な点において悔いは残るものの、集大成と言える出来でした。殺陣ばっかやってる劇団というイメージがあったようなので(約2回に1回は殺陣アリの芝居だったので間違いではないです)、殺陣のない演目で終えられた点もよかったと思っています。

で、1人になりました。その何年か前から脚本と並行して小説も書いていたので、「これからは小説の人になろう」と考えました……というよりも、心情的に「劇団」をきれいサッパリ切り離したかったのです。解散の後、なんだかんだで個人公演をやったり、演劇関係のコネでお仕事をもらったりしましたが、この時点で「劇団」という概念は僕にとって忌むべきものとなっていたわけです。

 

そんな折、NovelJamへの参加は大きな転機になりました。

 

全体の日程は2泊3日とは言え、本文の執筆に使える時間は1日目の昼下がりから3日目の朝まで。3000~10000字の掌編を書くのにちょうどいい時間かもしれませんが、それは書くことが決まっていればの話です。

何を書くか決めるまでが一番スリリングでした。ここで泥沼にハマったり、あとになって後悔するようなテーマを選んだりしたら大ピンチです。引き返して考え直す時間はありません。

「平成」とかいう鬼畜のお題。編集さんの米田さん、デザイナーの杉浦さんに協力してもらいながら、思いつく道筋を挙げていきました。その中に、「平成最初=昭和最後の日、自粛ムードに翻弄される小劇団」というのがありました。これを結局選ぶわけですが、実はあの時の数分間、かなり激しい葛藤があったのです。

「お前結局劇団のこと書くんか」

「もうこりごりちゃうんかい」

「他にないんか世間知らず」

頭の中で猛虎弁の妖精さんたちがまくしたてます。彼らの言う通りです。あれほど「劇団」を呪っていたくせに、いざって時に「劇団モノ」を書くというのは、ひどくダサいことであるように思われたのです。

しかし結局、この作品を書くことで、ある種の諦め、あるいは覚悟のようなものができました。

「俺は14年間、劇団をやっていた人間だ。生まれ変わることなんてできない。受け入れるしかない」

執筆課程で、米田さん・杉浦さんが面白がってくれたのも大きいです。作品を通じて自分自身が肯定されているような気がしました。(その節は本当にありがとうございました)

 

テーマが決まったあとは結構スラスラ書けました。出来上がったものがこちらです。

bccks.jp

moriyamatomohito.hatenablog.com

 

解散を決意する直前の数週間がまさに人生のどん底で、「解散を決意する」→「解散する」→「NovelJamで劇団モノの小説を書く」という3段階を経て、やっとこさ本当の安定感を取り戻せた感じです。

「ええい、劇団モノで行ったれ」とアクセルを踏めたのは、時間がなかったおかげです。〆切さんという人は本当に有能です。事前にお題を渡されていたり、じっくりゆっくり考える時間があったりしたら、僕はたぶん劇団モノは忌避していたでしょう。

 

さて、突然ですがここでお知らせです。劇団というものに向き合う余裕ができたので、元劇団主宰者として本を一冊出すことにしました(電子書籍です)。『劇団解散したけど質問ある?』というタイトルで、演劇活動の裏側をお見せしたり、これから演劇をやっていきたい人にアドバイスをしたり……といった内容です。今年中に発表する予定です。興味があればぜひ買ってやってくださいm(_ _)m

 

www.noveljam.org

次のNovelJamでどんな作品が出てくるか、今から楽しみにしています。僕はせいぜいTwitterで拡散に協力するとか読んで感想を書くぐらいしかできませんが、参加者の皆さんがんばってください。

ちなみに、全買いはしませんぞ!(笑) 一介の通行人として、面白そうな奴だけ買います。