シアターモリエールでの15人降板が引き金になって(?)、Twitterで小劇場のチケットノルマが話題になっています。
僕自身はノルマについてこういうスタンスです。
チケットノルマの件、役者は実際にその団体の公演を観た上で「ノルマ背負ってでも出たい」と感じたなら出ていいと思う。ノルマ=ゴミ劇団はいささか早計。
— 森山智仁 (@bacoyama) 2020年1月30日
「ノルマすなわち搾取だから出ない」
という固定観念で出演先を探していると、良いカンパニーと出会うチャンスを逃す可能性があります。
原則として主宰者がリスクを負うべきというのは正論ですが、何十万も自腹を切る覚悟のある人にしか演劇を打つ権利がないとは思いません。
募集条件より、まずその団体の公演を見るべきではないでしょうか。
「役者にノルマ負わせるなんて信じられない」
とおっしゃる方もいますが、僕にはただノルマじゃないからといって見たこともない団体に出るほうが余程びっくりです。
面白いことよりプロ扱いしてくれることのほうが大事なのでしょうか。
ここから本題
さて、問題視されているのは、888企劃主宰の馬原さんが言うところの「搾取システム」です。
今日のブログです。
— 馬原 颯貴 (@MaharaSohki) 2020年2月3日
演劇関係者は、もちろんそうじゃなくとも、絶対に読むか、もしくは絶対に読まないかしてください。
運営。 - ぽろぽろこぼれる https://t.co/tnI7UVAdoK
演劇がビジネスだとしか思ってない奴もいる。
演劇を金ヅルとしか思っていない人間は実在します。
僕も「内容には興味ないです」と面と向かって言われたことがあります。
ビジネスライクに演劇をやることそれ自体は何も悪くありません。
問題なのは自分以外の誰か(キャストかスタッフかお客さん)に過当に支払わせることと、支払うべき経費・人件費を支払わないことです。
WEB上に作品を公開している脚本家が警戒しないといけないのは、
「演劇は金ヅルでしかない」→「脚本に金かけたくない」→「無断上演でよくね?」
という理論です。(理論ではない)
公演予算のうち脚本使用料は何%なのか
皆さんご存知でしょうか。
自分の劇団では0%でした。
技術スタッフ以外、現金を受け取るのはチケットバックのみで、作品や演技の質は報酬対象外でした。
主宰=脚本・演出の劇団はこの形が多いと思います。
自分の作品を発表する機会をみんなに作ってもらっているのですから、プロぶって報酬を請求するのはおかしな話です。
でも、他人の作品を使わせてもらうなら使用料を払わないといけません。
最古参の脚本登録サイト「はりこのトラの穴」では以下のように定められています。
1 小学校、中学校、高校、その他学生の無料公演 無料
2 アマチュア劇団の公演、学生の有料公演 5000円
3 プロの劇団の公演 全チケット収入の1割
全チケット収入の一割が5000円に満たない場合は5000円
4 記録物の公開 作者と別途相談のこと
僕もはりトラを利用していますが、独自に以下の規定を作っています。
無料公演 0円
有料公演 一般前売チケット20枚分
観客の9割は脚本ではなく役者を観に来ていますが、舞台の「良さの上限」は脚本で決まるので、全チケット収入の1割とか一般前売チケット20枚分といった値段は決して高くないと考えます。
ほとんどの場合「一般前売チケット20枚分」は「全チケット収入の1割」より安いのですが、
- アマチュアとプロの線引きが難しい
- チケット収入の証明が難しい
ということで、独自規定を作りました。
5000円×20枚なら100000円。
演劇を金ヅルとしか思っていない場合、いの一番にカットすべき支出だと考えるでしょう。
「条件(人数・上演時間)の合う作品をはりトラで探して、下っ端のライターにちょろっとリライトさせて、タイトルも作者名も勝手に変える」ぐらいのことは平気でやるだろうと想像します。
タチが悪いのは、作者にバレないことです。
たまたまその作品を知っている人が観に行って「あれ?」と思って作者に「許可しました?」と問い合わせない限りバレません。
いわゆる搾取系のアイドル舞台ではありませんでしたが、僕は鴻上尚史さんの名作『トランス』を、タイトルも作者名も変えて内容丸ごとそのまま上演しているのを見たことがあります。
作者の皆さんは当然、無断上演のリスクは承知の上で公開しているはずですが、「本当にとんでもない人間がこの世に実在する」ということを改めて意識したほうがいいと思います。