冬に徒歩で日本を縦断しようという比嘉琉久くんの挑戦について
なんか無茶なことをやろうとしてフルボッコにされている少年がいます。
【デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場 (集英社学芸単行本)/河野啓】ポンとお金を出す人がこんなにいるのに、それでもなおトレーニングが疎かになるほど奔走しなければならないのかと驚きました。計画… → https://t.co/pA7VjX3KmC #bookmeter
— 森山智仁 (@bacoyama) October 25, 2021
たぶんもう諭せる状態ではない。反対意見は内容に関わらず「大人」の声として一括りにされ、エネルギーに変換されている。やってみたらいいさ。真冬まで少しだけ時間がある。移動しながら最大効率で知識と装備を揃えられるなら全くの不可能ではない。だがもし人の好意や救助に甘える気なら軽蔑の一言。
— 森山智仁 (@bacoyama) October 25, 2021
僕の感想は上記の通りなのですが、ロングトレイル志向の山ヤとして、少し補足します。
- 「無謀」という批判について
- 「他人に金を出させるな」という批判について
- 「元気と勇気を与えたい」という趣旨について
- 準備について
- やめんのかい
- どうすれば実現できるか
- 実はそんなに難しくない説
- 必要な装備
- 速攻でやめたことについて
「無謀」という批判について
まったくその通りです。
雪国にお住まいの方や雪山経験者が「舐めるな」という感情になるのもよくわかります。
おそらく、
- 普通に敗退する
- 野宿を諦めて人ん家に泊めてもらいまくりながら達成する
のいずれかになるでしょう。
ただ、「無謀であることそのものは別にいい」と僕は思っています。
自分の命なんだから好きにすりゃあいい。
部活やサークルで登山を教わらず、かつチャレンジングな路線に進んだ登山者の一定数が「今思えば無茶で、10%程度の確率で遭難していたであろう山行」をやっているはずです。
その恐怖が引き金となり、やっと本腰入れて対策するようになります。
誰もが完璧に安全なステップアップをしているとはとても思えません。
彼の場合、遭難の確率が99%というだけです。
「他人に金を出させるな」という批判について
クラウドファンディングで予算を集めたことについて「働いて稼げ」という批判がありました。
実現可能性的には限りなく詐欺に近いと言えるのかもしれませんが、企画は公表されており、支援者は納得して支払ったはずです。
高名な冒険家も皆、スポンサー集めには苦労しているわけで、クラファンで旅に出る若者がいても別にいいと僕は思います。
「元気と勇気を与えたい」という趣旨について
そんな建前を作るべきではなかった、と思っています。
クラファンの体裁を整えるためにそういうことにしたのでしょう。
本当はただ自分がやりたいだけなのではないでしょうか。
「俺が日本縦断したい」「だから金出してくれ」のほうがスカッとしています。
達成すれば多くの人が勝手に励まされたはずです。
自分の冒険で他人をどうにかしようなんて烏滸がましい考えです。
準備について
元々旅が好きで、「でっかい挑戦をしたい」という夢もあった。今回の旅の資金を集めるため、クラウドファンディングを実施。一度目は失敗したが、2度目は目標額30万円に対して約10万円が集まった。
さらなる資金造成とトレーニングを兼ねて7月と9月には東京でテークアウトの配達員として、徒歩で牛丼やファストフードを届けた。多い時は1日に30~40キロ歩いた。
沖縄に戻ってからもトレーニングとして、実家のある糸満市から北中城村のイオンモールライカムまで、約3キロの荷物を担いで歩く。
ここに書かれていることが「準備」のすべてならば、成功率は限りなく0%に近いでしょう。
約3kgって僕が山に行く時、訓練のため上乗せするオモリの重さです。
わずか3kgで「トレーニング」と感じられるなら足腰が貧弱だと言わざるを得ません。
やめんのかい
この上まで書いた時点で、どうやら中止(延期?)したらしいと知りました。
【修正版】
— ぴずむ (@menthol5mg) October 25, 2021
日本縦断2800キロ徒歩挑戦の比嘉さん突然のインスタ報告
・延期するか迷ってる
・道の駅で寝るつもりだった
・沖縄からまだ出てないっぽい?
・九州の山を攻略する方法も考えてなかった
・瀬戸内海と山陰と山陽の位置を全く分かってなかった
・凍死も怖いけど熊の方が怖い
でもせっかくなので続けます。
どうすれば実現できるか
建設的に考えてみましょう。
どうすれば
- 冬に
- 日本海側を通って
- 日本を縦断
できるでしょうか。
実はそんなに難しくない説
ポイントは「縦走登山ではない」という点です。
冬のアルプスで3泊以上の縦走を難なくやれる人にとっては必ずしも困難な挑戦ではないのではないでしょうか。
山道でなく街道を歩いていいわけですから、
- 買い物し放題
- 天気予報見放題
- 除雪済みの道を選んでいい
- 幕営は風が弱い場所をいくらでも探せる
と、甘い部分がかなりあります。
困難な、というか不可能に近い点としては、
- 到着予定日が決まっている
- 予算に上限がある
の2点が挙げられます。
気象条件的に、停滞日が必ず発生するはずです。
11月22日発→1月28日着ということは、単純計算で1日約28kmです。
停滞日を考慮した計画ではないのでしょう。
そして、停滞すればその分、食糧・燃料が追加で必要です。
期日や予算に縛りがあるならクリア不可能なクソゲーです。
しかし、時間や予算を潤沢に使えるなら、普通にクリア可能と考えられます。
あ、「野宿」なら絶対無理です。
テントその他色々必要です。
では、どんな装備があればやれるでしょうか。
必要な装備
●スキー:平地を進んでいいなら筆頭に来るアイテムです。
もし「徒歩」という形にこだわるならワカンやロングスパッツが必要です。
●アイゼン:凍った斜面をすべて避けることはできないでしょう。
●ピッケル:同上。
●冬山用の登山ウェア諸々:クソ高いです。
●冬山用の帽子・グローブ・登山靴:クソ高いです。
●冬山用のテント・マット・シュラフ:←↑ここまでで30万以上かかると思います。
●大型ザック:買い物し放題ですから食糧には困りません。
水は雪を融かせば手に入ります。
手に入りにくくて重要度が高いのが、
●燃料:です。
そんな都合よくホームセンターが点在しているわけがありませんから、燃料は多めに持ち歩くことになります。
テント等のサイズや着替えも考えると、中型以下のザックでは収まらないでしょう。
●テルモス(魔法瓶)
●ヘッドライト+予備電池
●スマホの充電器+予備電池
ざっとこんなところでしょうか。
速攻でやめたことについて
とても残念です。
せっかく出発したのだから、中断するにせよ、
- 連日25km以上歩くのがどれほどのことか
- 野宿とはどういうものか
- 実際のところ金は1日いくらかかるか
- 成功するために必要な技術や装備は何か
情報を集めてからやめていれば、リベンジに繋がったはずです。
貴重な機会をドブに捨ててしまいました。
※追記:まだ確定ではないようなのでいったん打ち消し線を引きますm(_ _)m
それでも、(支援金は返却すべきとして)彼には再挑戦する権利があります。
今すぐ北国に引っ越し、目的に特化してみっちりトレーニングを積めば、来年、やれなくもないんじゃないでしょうか。
成功の可能性を感じたら、その時は僕も支援します。