緊急事態宣言が出たことで演劇は救われた
緊急事態宣言の、
- タイミング
- 期間
- 運用
- 理解
については色々と議論の余地があると思いますが、とにかく4月に緊急事態宣言さんが登場してくれたことで小劇場界は救われました。
というのは、極めてシンプルな話で、
稽古場が閉まったから
です。
6月の公演も今の時期に中止が決められるのは、5月中に稽古ができないからです。
先日、とある公演(自分のプロデュースではありません)を中止するか否かについて何人かと話した際、
「稽古ができないから」
というのがかなり強い理由となって中止が決まりました。
これが、
「稽古場が空くならやりたいけど空かないから」
なのか
「稽古場に集まるべきでない、もとい出かけるべきでないから」
なのかは大きな違いですが、どういう意図であろうと、強行を封じる決め手になったのは確かです。
小劇団は基本的に
公共の集会室を稽古場としています。
そして、緊急事態宣言が、公共の集会室が休館を決定する根拠になっています。
もしも緊急事態宣言が出ていなかったら、判断の遅い集会室等を探して稽古をやり、無思慮な情熱で公演を打つ劇団がいてもおかしくなかったはずです。
僕自身、個人宅での稽古を検討したわけですから、批判される隙はあります。
残念ながら、危機感を完璧に共有するのは不可能と考えるしかありません。
わざわざ県外まで遠征してパチンコを打つような人が実在する以上、平均民度を高めに見積もるのは悪手です。
自粛"ムード"だけなら、おそらく、一部の劇団は自粛しなかったでしょう。
物理的に、「稽古場が空いていないなら仕方ない」と、諦めてもらえたわけです。
平田オリザさんが製造業を引き合いに出して
批判を受けており、僕もこれはさすがに擁護できません。
外から失礼します。当方演劇に携わっておりますが、これは擁護できません。普通に平田オリザさんの失言だと思います。
— 森山智仁 (@bacoyama) 2020年5月1日
理解されない焦りがあるのだろうと思いますが、他業種を引き合いに出して哀れを誘うのは良くないですよね。メディアに取り上げてすらもらえず死にかけている業種だっていくらでもあるはずです。
— 森山智仁 (@bacoyama) 2020年5月1日
おっしゃる通りですね。認識を改め、取り消してくださると良いのですが……
— 森山智仁 (@bacoyama) 2020年5月1日
過去15年以上の観劇人生で一番面白かったのが平田オリザさんの『忠臣蔵』という作品だったので、本件は本当に残念なのですが、4月以降に公演を強行するような事例が(目立ってはい)ないからまだ「傲慢だ」という批判で済んでいます。
稽古場が閉まっていなかったらもっとひどいことになっていたかもしれません。
罰則があっても
犯罪を犯す人はいるわけですから、罰則がない中で多くの人をコントロールするのは非常に困難です。
行列をジグザグに並ばせたい時、
①「ジグザグに並んでください」と声を張り上げてもまず思い通りにはなりません。
そこに「ジグザグに並ぶべき正当な理由」をいくら添えても無駄です。
②「こんな風に並んでほしい」と図解したものをみんなの見えるところに掲げるほうが声掛けよりはマシでしょう。
しかし、結局のところ「要請」や「指示」より、
③ポールパーテーションを設置すれば一発クリアです。
考えるまでもなく自然とそうなってしまうように環境を整えればいいわけです。
道徳を示して個々に判断・議論させてもなかなか成果は出ません。
特に、スピードが求められる時はスマートな誘導が重要です。
文化の灯を絶やすなとは言うけれど
僕の考えは、
- 今は人命優先
- 収まってから再点火すりゃあいい
- "オンライン演劇"にはやや懐疑的(映像作品はどんどん作りゃあいい)
- やれるようになったらすぐ舞台公演を企画するから今はゲームでもしてようぜ
です。
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