なぜ演技論を語る人は少ないのか
小説界隈ではよく創作論が話題になります。
登山界隈でも技術や装備の話はバズりやすいです。
一方、演劇界隈で「演技論」の話題は滅多に見かけません。
バズりやすいのは金銭関係やパワハラ・セクハラの話です。
(というのは僕のタイムラインだけかもしれませんが)
小説も山も演劇も正解は無く、みんな手探りでやっているはずなのに、演技論だけ話題になりにくいのは何故でしょうか。
SNSでバズりにくいのは、
①みんなあまり興味がない
これが最大の理由でしょう。
- どこのオーディションやオファーを受けるのが良いか
- 当てられた役をどう演じるか
- どうチケットを売るか
等々、もっと優先すべき課題があり、演技論はいまの考え方は少なくとも間違ってはいないという前提のもと、あまり戦わされることはありません。
もう一つ、
②どんな劇団・脚本・演出家にも通用する汎用的な演技論は存在しにくい
という理由も考えられます。
存在しないことはないはずなのですが、汎用性の高い技術だと基礎的あるいは抽象的過ぎて、議論の余地がありません。
小説や山に比べて(一人の役者が)自分で選べる事柄があまりに少ないわけです。
役者はいろんな現場を経験する中で、
- 劇団のカラーに馴染む方法
- 演出家とうまくやる方法
- 共演者とうまくやる方法
- 稽古場での立ち居振る舞い
などを学んでいくことになりますが、それらは処世術であって、演技術ではありません。
演技論を語るには
「より良い演技をする方法」みたいなフワッとした視点ではなく、具体的なクエスチョンを提示することが有効となりそうです。
最近アマプラで「残された者 -北の極地-」という映画を見ました。
僕はこの作品でラーメンをボリボリ食う演技が最高だと思ったのですが、
「あの演技をより良くすることは可能か」
というお題は(場の全員がその映画を見ていれば)少し盛り上がるかもしれません。
ちなみに僕はあれが文字通り「最高」であり、改善の余地はないと考えています。
あと、身近なところでは、
「稽古前のアップは何をすべきか」
というお題も語りやすそうです。
目下、本番直前であり、座組でもそんな話をしている余裕はなく(直前でなくても現場が始まったら演技論を語る余裕など普通ない)、稽古後・本番後の居酒屋という「議場」も失われた状態ですが、なんか久々にどこかで演技論の話とかしたいなあと思っています。
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