それにしても語彙が欲しい

脚本家・フリーライター森山智仁のブログです。毎週土曜or日曜(&気まぐれ)更新。

児童相談所に弁護士が必要な理由

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本日はママ友洗脳事件についてです。

 

「児相は何をしていたのか」

この事件、児童相談所が「差し迫った危険はない」と判断して、保護をしなかったことについて、

碇翔士郎ちゃんが死亡した事件を受けて、福岡県篠栗町と福岡児童相談所などが3日、記者会見し、翔士郎ちゃん一家への対応の経過などを明らかにした。児相は、亡くなる約1カ月前に翔士郎ちゃんの元気な姿を直接確認したと説明。森本浩所長は「差し迫った危険はないと判断した」とする一方で「結果として亡くなられたことを重く受け止めている」と語った。

出典:毎日新聞

 

「何をしていたのか」と批判が起こっています。

 

この批判はあって然るべきなのですが、僕には「児童相談所が子供を保護するのはいかに難しいか、あまり知られていないんだろうな」という気持ちが湧いてきました。

 

事件があった福岡は、実は日本で初めて「児童相談所に弁護士を常勤職員として配置」した県です。

ゆえに「先進的だったはずなのに何故……」とも思うわけですが、ひとまず周知したいのは保護の難しさと弁護士の必要性です。

 

『ルポ 児童相談所』より

引用します。

福岡市で虐待死亡事件が多発し、2009年は5件、6人が死亡しました。児童相談所がかかわっているケースもあったし、かかわっていないケースもありました。いまの体制では不十分だということで、職員の増員と専門性の向上のために、そのころから児童福祉司の専門職採用を始めました。また、保護者の同意の有無にかかわらず、迅速に子どもの安全確保のための保護を行うことが重要だということで、その判断を的確に行うためには、法律の専門家の助言や判断が必要だと考えました。

一方で、保護者の同意を得ずに保護を行うということは、保護者との間に激しいやりとりが発生するので、職員に不安やためらいが生じざるを得ません。一時保護が法的に妥当であるという、バックアップする専門家の判断があることで、躊躇なく一時保護を実施できると考えました。現場の児童福祉司であるワーカーたちの自信につながればいいな、という思いもありました。

(大久保真紀著 / 朝日新書 / p.205)

 

福岡県弁護士会のコラムには、児童相談所に常勤している弁護士さんによる記事がありました。

子どもの一時保護後、児童相談所に子どもを返せと怒鳴り込んでくる保護者との面談に立ち会うことがあります。虐待の疑いがあることを伝えてもわかっていただける保護者がいることは稀で、勝手に連れて行ったと怒鳴り散らされることがほとんどです。また、ネグレクトの疑いがある保護者、一時保護中の子どもの保護者、施設入所中の子どもの保護者等、様々な保護者と面談をします。言ってもいないことを弁護士に言われたと申し立てる保護者がいたり、どこに地雷があるかわからずふとした一言で怒りが沸点に達する保護者がいたり、児童相談所への恨みつらみを聞かされることばかりです。「普通、大人になってこんなに人に怒られることないよなー」と思いながらも、粘り強く面談を続ける日々です。

病院や学校、市町村との会議では「児相は何も動いてくれない」という不満が充満した状態で、私が参加することになります(まさに、9回ツーアウト満塁のピンチでマウンドに上がるピッチャーです。)。関係機関の方は、児童相談所が強大な権限を持っているかのように勘違いをされていたりしますので、児童相談所としては何が出来て、そのためにどういう要件が必要かをお話しします。そして、児相に投げたら終わりではなく、関係機関の皆様にも連携して動いてもらわなければならないと理解していただくこと、このようなことを訴えるのが私の役目となっています。

このように、どこに行っても「嫌われ者」の児童相談所の職員として、あらゆる場所で色々言われ、その時はさすがに腹が立ったり後悔することがないわけでもないですが、なぜか、とてもやりがいを感じています。それは、職員一丸となって同じ思いでケースに対応していることが大きいのではないかと思っています。

www.fben.jp

 

つまり、

  • 親との対決は常勤の弁護士が必要なほど激しい戦いである
  • ワーカーも弁護士も相当な強メンタルでないと務まらない

ということです。

 

ママ友洗脳事件は

この事件はこの事件として、児相にもっとできることはなかったのか検証されるべきですが、

「児相はどこも怠けている」

「頼りにならない税金泥棒」

みたいに決めつけている人がいたら、ちょっと考え直していただきたいです。

 

「子供がかわいそう」

という誰も文句のつけようのない感情が昂じて、過剰な児童相談所叩きが起こっているように感じました。

 

 

 

※『ルポ 児童相談所』は小説『白夜と空葬い』の資料として読みました。

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