登山計画を公開しない理由
山に行く際には「登山届」の提出が奨励されており、山域によっては義務づけられています。
何のために出すかと言えば、万が一行方不明になった際、その人がどういう山をやるつもりだったのか、警察や捜索関係者が速やかに把握するためです。
※参考
その目的からすると、必ずしも紙での提出にこだわる必要はないと考えられます。
アプリ経由で提出された登山届が役立って助かったという記事も読んだことがあります。
検索のスピード・正確性からして、紙よりアプリのほうがいいぐらいです。
また、「提出」にこだわらなくてもいいはずです。
僕の先輩は「家族に計画を伝え、所定の日時までに下山報告がなければ○○警察署へ連絡するよう頼んでおく」という形を取っています。
これでも十分目的は達せられます。
ちょっと不思議なのは
ネット上で「山行記録」はよく見るのに、「登山計画」はあまり見かけないことです。
もちろん探せば出てくるでしょうけど、山のコミュニティサイトやアプリも「計画」はシェア用ではなく非公開・個人用がデフォルトです。
ネット上に登山計画を公開すれば、
- 登山届に近い役割を果たす
- 過去の山行にも飛べれば技術レベルや癖が察せられ、捜索のヒントになる
- 公開を前提とすると自然、しっかり練ることになる
といったメリットが考えられるのですが、あまり流行っていないのは何故でしょうか。
理由を考えてみました。
①プライバシーの公開になるから
まぁこれがほとんどだと思います(・∀・)
例えば、僕のことを殺したい人間がいるとして、僕が登山計画を公開していたら、「滑落に見せかけた殺害」が可能になってしまうかもしれません。
ストーカーとか意味不明な悪戯とかそういうのも考えられます。
いくつかのメリットを全部帳消しにするほどこのデメリットが大きいです。
けれど、これだけが登山計画の公開が流行らない理由とも思えません。
②口を出されたくないから
これ、結構あるんじゃないでしょうか。
「ペースが早過ぎる! 山をなめるな!」
「いや、ペース遅過ぎません?笑」
「バリエーションルートですけど大丈夫ですか? 失礼ですが登山歴は?」
「単独行は良くないって言われてるの知らないんですか?」
「そこ行ったことありますよ! よろしければご案内しましょうか?」
ちょっと考えただけでもクソリプの数々がありありと想像できます。
そういう浮世の煩わしさから解放されたくて山をやっている人も少なくないでしょう。
登山計画の公開は「若い女性の顔出し」と同程度のリスクがあると言えます。
③遭難するかもしれないから
これもちょっとあると思います。
エガちゃんが富士山から撤退したのは評価されていますが、
強行して遭難したらボコボコにされていたでしょう。
登山に対するインターネッツって、
- 「撤退」は手放しで評価する
- 「遭難」は袋叩きにする
傾向があります。
事前にクソリプが来なかったとしても、万が一遭難したその事後、
「計画が無謀過ぎた」
「経験に見合っていない」
と言われかねません。
山をなめるなおじさんにとっての好材料を自ら差し出しているわけです。
④早とちりの捜索願を出されるかもしれないから
たとえば、ビバークして計画より1日遅れても、自力下山できたなら遭難ではありません。
でも、登山計画を公開していて、半日でもTwitterが沈黙したら、心配性の人が捜索願を出してしまうかもしれません。
もちろん命が助かるに越したことはないわけですが、捜索隊の無駄な稼働は税金の無駄遣いであり、他の要救助者を圧迫する可能性もあります。
これもなかなかのデメリットです。
それでも
僕は当分、このブログに登山計画の大半を「提出」しようと思っています。
(異常気象とコロナでしっちゃかめっちゃかですが)
理由は、前述したメリットに加えて、
- 若い女性ではないから(やまこはアイコン詐欺ですまんな)
- 計画をどう実行・修正したかも資料になり得るから
です。
羽根田治さんのヤマケイ文庫『遭難』シリーズを読むのが趣味でして(いい趣味してんな)、これが世に出ているのは「後進に役立ててほしい」という遭難者の善意と、羽根田さんの熱意によるものです。
決して話す義務のない話が資料となり、次の遭難事故を間接的に防いでいます。
無事に、あるいは修正して終えた登山計画も、もしかしたら研究者や後進の役に立つかもしれません。
芽は出ないかもしれないけれど種は蒔いておこうということです。
※参考
追記
新着動画です。
※チャンネル登録に関しては、恐れ入りますが、YouTubeのアルゴリズムの関係上、物書きの僕にでなく「登山」に興味のある方だけお願い致しますm(_ _)m