それにしても語彙が欲しい

脚本家/フリーライター・森山智仁のブログです。ほぼ登山ブログになってしまいました。

コロナで「自分そんなに演劇好きじゃなかったかも」と思ってる演劇人に伝えたいこと

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もしかしたらそんな人が結構いるかもしれないと思っています。

 

今までの流れ

ざっくり振り返るとこんな感じです。

 

緊急事態宣言

ほぼ全面的に公演中止

すぐさまオンライン演劇が話題に

緊急事態宣言解除

じわじわ公演再開

劇場クラスター感染発生・新規感染者数増加

再び公演中止発表相次ぐ

 

演劇界全体が大ピンチなわけですが、個人的に「普通に公演ができる状況になるまでモチベーションが保てないかも」というピンチに陥っている人もいるんじゃないでしょうか。

 

①生活の問題ではない

ギャラやバックで食っている人は極少数派のはずです。

稽古や公演がなくなった結果、バイト(職種によりますが)を休まなくて済むので、生活は逆に安定したでしょう。

稽古場までの交通費やノルマも払わなくて済みます。

 

演劇をやらないほうがお金が貯まる

貧乏してまで演劇やりたいっけ……?

 

という疑問が湧いてきても不思議ではありません。

 

②なぜオンライン演劇をやらないのか?

あくまでライブにこだわりたいという強い意志をもって、オンライン演劇を積極的に否定している人もいるでしょう。

 

しかし、「オンライン演劇をやる」=「ライブの演劇を諦める」ということにはなりません。

そして、現状は映像しか安全な表現媒体がありません。

 

※個人的には「オンライン演劇」という言葉には疑問を持っています。

moriyamatomohito.hatenablog.com

 

オンライン演劇をやる気が起きないのはなぜ?

どうしても演劇をやりたいってわけじゃないのかも……?

 

という疑惑が生じ得ます。

 

③なぜ公演再開の流れに乗らなかったのか?

②と同じです。

感染リスクを考えて、やらないと決めている人も多いでしょう。

 

しかし、感染対策に予算と手間をかけ、客席間引きによる赤字上等で公演を行っているカンパニーもあります。

 

彼らと比較すると

どうしても演劇をやりたいってわけじゃないのかも……?

 

と思ってしまうんじゃないでしょうか。

 

④演劇が炎上した時

誰とは言いませんが製造業云々で炎上した時、「この世に不要なものだから淘汰されろ」的なコメントを見かけました。

新宿のクラスター関係でも見た気がします。

 

この世界に何が必要かは個人が決めることですが、確実に演劇がやりにくくなっている今、「自分は淘汰される側かもな……」と考えてしまう人もいるでしょう。

 

①~④を総合すると

演劇界からのフェードアウトが続出すると予想されます。

 

僕から伝えたいことⒶ

「そんなに好きじゃなくてもやっていいんじゃない?」

と考えています。

 

どんな表現活動でもそうですが、超本気のガチ勢にしか許されないわけじゃありません。

「わりと好き」ぐらいの気持ちでも大丈夫です。

何なら「惰性」でだっていいはずです(それで良い舞台が作れるかどうかはまた別の話)。

 

「あなたが一番長時間語れることは何ですか?」と訊かれ、それが「演劇」でなくて、「ディズニー」や「スポーツ選手」や「ジャニーズ」であっても、良い演技をする役者は大勢います。

引き出しという観点からすると、むしろ演劇以外に好きなものが色々あったほうがいいぐらいです。

 

僕から伝えたいことⒷ

「もし辞めても無駄にはならんよ」

と考えています。

 

演技の経験が直接役に立つ機会はないかもしれません。

しかし、物事は何がどんな風に繋がっているかわからないものです。

意外なところで「これ進研ゼミでやったやつだ」現象が起こり得ます。

 

例えば、僕は最近登山を始めたんですが、殺陣をやっていた経験から、刀の握り方をストックの握り方に応用しています。

 

反面教師的な応用も考えられます。

「あの演出家、全体のビジョンがまるで示せてないし、その場の思い付きで言ってるだけだし、相手によって態度変えてんな」とムカついたことがあるなら、自分が何かを説明・指導する立場になった時、そうならないよう対策できます。

上に立つ者がダメだとどんなに困るか知っているというのはかなりのアドバンテージです。

 

引退は敗北ではなく転身です。

――なんて言い方をすると太平洋戦争が思い出されますが、個人レベルではそれが普通です。