国が出す補助金について思うこと
いつぞやの10万円
給付にかなり長い時間がかかっていました。
僕個人は受付開始初日にマイナンバーカードで申請したのでわりと速やかに貰えたわけですが、お金が振り込まれてしばらく経ってから郵送での申請用紙が届いたあたりに、現場の混乱が見て取れました。
時間がかかっただけでなく、給付先が「世帯主」になっていることでも問題が起きていました。
GoTo関連
個人的にはトラベルは大いに活用させていただいています。
※正確には、今月末〜年明けの旅行をいくつも予約してある状態です。
しかし世間ではつい最近、予算は潤沢なのに下りるのに手間取って、割引が一時的に打ち切られるという珍現象が生じていました。
元々人気で派手に宣伝できるところばかり賑わって、制度に対応する下地がない、弱小の旅館や地域が救われていないという批判もあるようです。
文化芸術活動の継続支援事業
予算が大幅に余って、ついに四次募集が決まったそうです。
演劇人界隈では、
「貰わないと損だよ!」
「手続きがわからないなら教えてあげるよ!」
という雰囲気がムンムンしていましたが、僕は、
「期間内に企画がある人は貰えばいい」
「企画をでっち上げてまで貰う気はない」
と考えています。
つまりこういうことです。
文化芸術活動の継続支援事業、10万円の助成を受けるためには15万円の支出、20万円のためには30万円の支出をしなくてはいけない。入場料収入のある事業でない限り自己負担がでかくなる。逆に苦しくなっちゃうから応募できない人も多いんじゃないかなあ。
— 夏井孝裕 NATSUI Takahiro (@futodoki) 2020年8月25日
締切が近づき、予算が余ると来年の予算が削られるとの意見もあるが、それは目的と手段を取り違えている。この制度設計では支援出来る人は限られる。文化庁は余った予算を組み替え、補助金ではなく給付金として支援出来る制度を創設してほしい。コロナ禍の補正予算なら、柔軟な編成が認められるべきだ。 https://t.co/NxaBSN06Ev
— fringe (@fringejp) 2020年9月27日
コロナを巡る諸々の補助金・支援金
特別定額給付金もGoToも文化庁の継続支援も、予算はドカッと割いているのに上手く回っていない印象です。
心臓弱くないけど動脈硬化起こしてるみたいな状態に見えます。
持続化給付金に関しては不正受給が問題になっていました。
こういう輩が皆無ならもっと簡便な仕組みで済むのでしょうけれど、狡猾な人間がいないと仮定していいのは絵本の中だけです。
実際には本当に色々な人間が存在しているわけですから、面倒でも一つ一つチェックしないといけません。
※それより役所のシステムが昭和過ぎるというのが遅さの最大の原因のようなので、そのあたりは今後の改善に期待です。
かつては、飢饉に対して適切に備蓄・放出した大名が名君と呼ばれました。
配るものすらないのが最悪の状態であり、予算はあるわけですから最悪ではありません。
トップが蓄えを放つという構図自体は何百年も前から続いていることです。
しかし最近、
「問題解決の手法が補助金に偏るのはどうなんだろう?」
と思うようになりました。
日本の伝統工芸について調べていた時、こういう記事を見つけました。
日本で外国要人へのお土産となるケースが多いのは有田焼と輪島塗だ。それは、日本を代表する伝統工芸だからだ。伝統工芸とは言っても著名な作家が芸術品や美術品だけを造っているわけではない。ホテルや割烹、一般家庭向けにも量産しており、産地の佐賀県有田町や石川県輪島市は地元雇用を維持する「重要な地場産業」と位置付けている。
ところが、現実では有田焼も輪島塗も業界全般的にはじり貧状況にある。いずれも、1991年をピークに業界全体の売上高は下降し、最近では業界全体の売上高が5分の1から6分の1程度にまで落ち込んでいる。落ち込みの要因は共通で、バブル経済崩壊後の国内市場の縮小と、ライフスタイルの変化による需要減だ。
いずれの産地の中も二極化し、補助金依存で何とか食いつないでいこうと考える業者(主に高齢者)と、ライフスタイルの変化に合わせた伝統工芸品を世間に出していこうとする業者(主に40~50代の経営者)に分かれている。最近では後者の方が経営は安定する傾向が強まっており、中には海外市場攻略を狙うところも出てきた。
佐賀県陶磁器工業協同組合は「これまで補助金を使ってきても産地活性化の成果はほとんど出ていない。主な原因は産地の勉強不足と甘えに他ならない」と率直に反省する。
輪島塗が補助金依存になったのは、中央官庁にも責任の一端はある。重要無形文化財の輪島塗には工法や材料に文化庁が定めた定義がある。また、1974年に制定された「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(通称・伝産法)」でも、技法や原材料で一定の要件を満たさなければならない。
補助金を出しやくするために国が定義を定めたのである。合理的な判断と言える一面もあるが、定義が固まったことで、産地から多様性のある製品が消えた。このため、桐本氏が造る洋食に合った漆器は「輪島塗」と呼ぶことはできない。国が決めた定義が、現代の生活に合うもの造りを阻害してしまった一面は否定できないだろう。
なまじ気前のいい補助金が自助努力の気概や伝統を破壊してしまう事例もある――ということです。
もちろん、先立つものがないと何もできないわけですが、上の方々には「予算出したからヨシ!」ではなく、現場の実態をしっかり見てほしいと思います。
※さらに言えば、日程決めて対策する隙を与えて交通費かけてほんの数時間見るだけのほとんど意味ない「視察」ではなく、毎日現場にいて状況を把握できている人間からの意見の吸い上げが重要です。